小麦に1番多く含まれる成分は炭水化物のうちの糖質です。
糖質といって、何が思い浮かぶでしょう?
私はまっさきに糖質制限が思いつきましたが、
今回はパンへの効果を踏まえて、デンプンの機能についてまとめました。
炭水化物>糖質>デンプンとは?
パンに重要なのは、『グルテン』であることはみなさんご存知かと思います。
しかし、実は『デンプン』も同じくらい重要なのです。
小麦の中のデンプンと言われてもイメージが付かない方が多いかと思います。
水の中で小麦粉を練ったものをくりくりと押しつぶすと、水が白く濁ると思います。
この濁った水に沈む沈殿物が『デンプン』です!!
漢字で書くと、『澱粉』。沈澱する粉ってことです!
科学的な話をすると、デンプンとは…
ブドウ糖(グルコース)がたくさん連なったものです。
鎖の連なり方によって、2種類のデンプンがあります。
アミロース …直鎖状
アミロペクチン…枝分かれ
小麦デンプンにはアミロース約25%、アミロペクチン約75%含まれていると言われています。
重要な特徴① “糊化”
パンを焼いたことがある方はわかると思いますが、
焼く前のパン生地はぷにぷにしていますが、焼くと固くなります。
この硬くなる現象は、デンプンの“糊化”が影響しています。
デンプンは水を加えて加熱すると、固まります。
この現象が糊化(α化)です。
α化デンプンは口で噛んで分解でき、糖になるので甘くて美味しいと感じることになります。
生デンプン(βデンプン) → 水を加えて加熱→ α化デンプン
さらに詳しく! ※ざっと読みたい方は飛ばしていただいて結構です。
「小麦デンプン」の他に「じゃがいもデンプン」、「さつまいもデンプン」、「タピオカデンプン」などがあります。
実は、食物の種類によって性質が若干異なるのです!
①糊化開始温度…糊化が始まる温度
じゃがいもデンプンが最も低く、小麦は高いです。
つまり、じゃがいもデンプンは早い段階で糊化するため、料理時間の短縮になります。
反対に、小麦はじっくり時間をかけて糊化するため、粘度の急激な変化がありません。
ですから、焼成時までに成形が変形したり、生地が沈むことがないのです。
パンがふっくらするのは、グルテンとデンプンが合わさった力というわけです✨
重要な特徴② “老化”
α化されたデンプンは、時間の経過とともに離水し、元のβデンプンに戻ろうとします。
ただし、完璧な元のβデンプンに戻ることはできません。
α化デンプン →離水→ β‘デンプン
これはパンが次の日には硬くなってしまう現象です。
パンの老化は、デンプンの老化だけでなく、新鮮な香りが無くなったことも含めて言われることが多いですが。
さらに詳しく! ※ざっと読みたい方は飛ばしていただいて結構です。
老化速度も食物の種類によって性質が若干異なるのです!
タピオカは冷たいドリンクに入れてももちもちですよね!
それは冷却後の老化速度がとっても遅いからです。
反対にパンやお米は冷めると硬くなります。
この違いには冒頭に述べた2種類のデンプンの含有割合によるものです。
(比率%) | 小麦 | タピオカ |
アミロース | 30 | 17 |
アミロペクチン | 70 | 83 |
アミロースよりアミロペクチンの老化が遅いのです。
(それは、アミロペクチンの構造が枝分かれになっており、離水しにくいからです。)
さて、パンを冷蔵庫に入れた日にはカッチカッチになってしまいます。
それは水が凍る直前の冷蔵庫の温度帯がデンプンの老化が最も起こりやすいためです。
この冷蔵庫の温度帯を素早く通過することが、パンを硬くさせないポイントです!!
人も食べ物も老化防止対策!大事!
主な対策は4つです。
とにかくポイントは離水させないこと!!
α化デンプンを高温のまま乾燥させる
α化デンプンがβ‘デンプンに戻る前に水分を飛ばしちゃいましょうという方法。
インスタントラーメンや乾パンが挙げられます。
急速冷凍する
水分の移動を阻止するため、急速に冷凍しパン内の水も凍らせてしまいます。
一番老化の進む冷蔵の温度帯をなるべく短い時間で通過させるのがポイント!!
最近流行りのお取り寄せパンは冷凍便が多いですよね!
パンを老化させずに美味しく届けるための工夫なのですね。
砂糖などの副剤を加える
砂糖には水分を抱え込む保水性があります。
卵白を泡立てたり、お肉を柔らかくするのも砂糖の保水性のおかげだそうです。
添加物を加える
乳化剤や加工デンプンを使うのも一つの手です。
乳化剤はデンプンと複合体を作り、再結晶化しβ‘デンプンになるのを防ぎます。
加工デンプンは元々デンプンの老化というデメリットを解消するために作られたものです。
デンプンと書いていますが、こちらは化学的の合成された立派な添加物です。
化学的にデンプンの一部を変化させることで、老化耐性や物性改良、粘度安定など様々な機能を持つようになるのです。
〜ちなみに、添加物に対する私の考え方について〜
添加物の安全性は諸説ありますが、私は出来るだけ避けるようにしています。
食品添加物は国によって安全性の検査がされ、無毒性量の1/100の量の「1日摂取許容量ADI」が定められています。つまり、安全性は国に保証されていますが、これが何十年も摂取し続けて安全だという確証はどこにもないのです(既存添加物は長い食経験があるものなので、まあいいかなと思いますが)。ある添加物同士を組み合わせて食べた時の安全性もわからない。
国を信じて安全だと思って食べるか、危険だと思って食べないかは消費者の私たちがきちんと考え、選択するべきだと思います。
さいごに
いかがだったでしょうか?
誰かにわかりやすく伝えようとすることで、自分の勉強にもなります。
補足やコメントがあれば、遠慮なく送ってください!
下記の問い合わせリンクからでも InstagramのDMでもOKです🙆♀️
よろしくお願いします。
参考資料:
http://www.fcc-asc.com/_userdata/foodtopics_22_5.pdf(小麦と小麦粉の科学ー食品関連コンサル協議会(FCC)高橋明弘)
https://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=kai20140731ik1&fileId=410(食品を科学する―食品安全委員会)
https://www.nodai.ac.jp/hojin/journal/images/j_1007-08/p9.pdf(デンプンも老化するー東京農業大学)
https://www.naro.go.jp/training/files/reformation_txt2013_b03.pdf(小麦の品質評価技術ー農研機構)
https://www.taiyokagaku.com/lab/emulsion_learning/05/(食と健康Lab 第5回乳化剤ー太陽化学株式会社)
https://www.alic.go.jp/joho-d/joho07_000055.html(加工でん粉の基礎知識と現状についてー農畜産業振興機構)
小麦デンプンのアミロースとアミロペクチンの割合、タピオカデンプンとの比較数値の記述のところ、反対でしょうか…?
ありこさん
ご指摘いただきありがとうございます。
誤りでしたので、訂正いたしました。
すみません🙇♀️