北海道産小麦が有名になり、北海道産小麦を使ったパン屋さんや製菓材料店でもさまざまな種類の品種が増え、迷いますよね!
私は農業に興味があるため、小麦の栽培や品種の違いを知りたい!!
農業のことに詳しくなくても、ちょっと人より詳しくなれるようにわかるようにまとめました。
気軽に見てもらえれば嬉しいです。
小麦の種類
薄力粉・中力粉・強力粉
よく言われる薄力粉・中力粉・強力粉は、小麦のたん白質含有量の違いで分けられます。
例えば、「春よ恋」は、たん白質含有量が多いため、これを挽いた小麦粉は「強力粉」に分類されます。
さらに詳しく見ていきます。
小麦胚乳中のたん白質はでん粉粒の隙間を満たして存在しています。
そのたん白質が増加すると、隙間が少なくなり、粒質は半透明上の硝子質粒になります。
反対に、たん白質が減少すると、隙間が多くなり、粒質は粉状質粒になります。
胚乳組織が密になった硝子質粒は硬くなっているので「硬質小麦」、
反対に、粉状質粒は胚乳組織中に微細な気泡が多く存在しているので、柔らかい「軟質小麦」になります。
つまり、まとめると、硬質小麦は強力粉、軟質小麦は薄力粉となるのです。
秋まき小麦と春まき小麦
秋まき小麦は、その名の通り秋にまく小麦です。北海道の秋まき小麦は積雪前の秋に播種し、翌年の夏に収穫を行います。
一方、春まき小麦は越冬が難しいことから春にまき、その年の夏に収穫を行います。そのため、栽培期間が短くてすみます。
しかし、秋まき小麦に比較して生育期間が短いため収量が少なく、収穫期が降雨期にあたるため、作柄や品質が安定しにくいという欠点もあります。
秋まき小麦 | 春まき小麦 |
---|---|
きたほなみ | ハルユタカ |
キタノカオリ | 春よ恋 |
ゆめちから | はるきらり |
上がきたほなみ、下が春よ恋です。
春や恋に長い髭が生えているんです!
品種の変遷
秋まき小麦
めん用小麦
昭和42年 ホクエイ→ムカコムギ
昭和49年 ホロシリコムギ、タクネコムギ
⭐️ホロシリコムギは密植による多収化や機械収穫に適していた
➡️作付面積の拡大
➡️それに伴い、日本麺用として品質改良が強く求められるようになる!!
昭和56年 チホクコムギ
⭐️茹で麺の色、粘弾性が優れていた
⭐️短稈で倒伏に強い
⭐️ 多肥による増収が可能
➡️これまでの北海道産小麦の評価を変える良質な品質を有し、実需者の期待に応える品種であった
ただ、やはり弱点があったようです。
💧雪腐病、うどんこ病、穂発芽耐性に弱い
平成2年 タイセツコムギ
⭐️小麦粉の色調が明るく改良
💧穂発芽耐性、耐倒伏性が劣る
➡️ 収穫期前後の降雨による穂発芽や赤かび病などに強く、安定した栽培が可能で、かつ高品質な小麦品種の育成が強く望まれた
平成6年 ホクシン
チホクコムギの弱点が改善されました。
⭐️雪腐病うどんこ病、などの耐病性に優れた
⭐️収量はチホクコムギと同等かやや勝る
➡️安定して栽培できると、急速に作付面積が拡大
➡️栽培方法の開発
しかし、これでもやはり弱点はあったようです。
💧コムギ縞萎縮病に弱い
平成12年 きたもえ
ホクシンの弱点が改善されました。
⭐️縞萎縮病に強い、穂発芽耐性もホクシンより優れた
ただし、二次加工性ではホクシンに劣るため、なかなか作付け面積は伸びません。
💧茹で麺の粘弾性がホクシンに劣る
平成18年 きたほなみ
そこで登場したのが”きたほなみ”
こちらは、栽培面だけでなく、製粉面、加工適性にも優れており、オーストラリア産のASWにも匹敵する高品質であると期待されました。
⭐️収量が高い、穂発芽耐性、赤さび病抵抗性に優れた
⭐️灰分が低い、製粉歩留が高い
⭐️粉色が良好、茹で麺の色、粘弾性に優れた
➡️平成24年産には10万haの作付けとなった
➡️年産による生産量や蛋白質含有率など、品質の安定化が求められた
平成23年 きたさちほ
⭐️きたもえ並みの縞萎縮病抵抗性
⭐️茹で麺の粘弾性改良
➡️きたもえに変わり普及
パン用小麦
平成13年 キタノカオリ
⭐️強稈で倒伏に強い
⭐️多肥による増収が可能
💧穂発芽耐性が弱い、低音条件で登熟すると低アミロ小麦を生じる
平成21年 ゆめちから
⭐️穂発芽耐性がホクシン並み
⭐️コムギ縞萎縮病抵抗性が強い
⭐️高蛋白含有率の超強力粉
💧黄化症状、葉の枯れ上がり
平成24年 つるきち
キタノカオリを母に、優れた中華麺適性をもちます。
⭐️蛋白質含有率が高い
⭐️耐倒伏性
⭐️キタノカオリに比べ、穂発芽耐性改良、低アミロ小麦になりにくい
パン用途で利用するには、たん白質含有率13.0%以上が望ましいとされています。
春まき小麦
パン用小麦
昭和60年 ハルユタカ
⭐️超短稈で多肥密植栽培が可能となり、収量が多い
➡️作付面積急増
➡️しかし、秋まき小麦に比べ、成熟期が遅く収量が劣ること、成熟期前後の降雨による穂発芽の発生や赤かび病がしばしば多発
生産が難しいため、「幻の小麦」と言われているそうです。
平成5年 春のあけぼの
⭐️ハルユタカより、赤かび病抵抗性や穂発芽に強い
💧成熟期が遅く、黒目粒が発生しやすい
➡️作付面積は伸びず
平成12年 春よ恋
⭐️ハルユタカより、赤かび病抵抗性や穂発芽に強い
⭐️多収で製パン適に優れた
➡️春よ恋に適した栽培技術の普及により、生産量が安定し始めた
💧稈質が弱く、倒伏の発生が多い
平成19年 はるきらり
⭐️春よ恋よりも耐倒伏性が優れる
⭐️穂発芽が優れ、かび毒による汚染リスクが低い特徴を有する
💧製パン時の生地特性が春よ恋と異なり、加工適性が劣る
➡️穂発芽耐性や耐倒伏性などの栽培しやすさと高い実需評価を併せ持った品種の育成が急務となっている
小麦の良さを図る指標
小麦は、栽培のしやすさから、製粉のしやすさ、製パンのしやすさなど様々な観点から特徴付けられます。
栽培について
栽培のしやすさに関する小麦の特性を詳しく説明します。
耐寒性、耐雪性
冬の寒さに耐える力は、秋まき小麦にとっては重要になってきます。
雪の下で菌が発生し、病気にかかってしまうことがあります。品種によって、生育不良環境に対する反応の違いがあります。
穂発芽性
穂発芽とは、小麦の粒が穂についたままで発芽してしまうことをいいます。もともと小麦は乾燥地原産の作物であるため、休眠をあまりせず、穂発芽しやすいようになっているそうです。
穂発芽が起こる原因として、収穫期の降雨や低温があります。
秋まき小麦だと、7月下旬〜8月上旬、春まき小麦だと、8月中旬に収穫があります。この時期に雨がたくさん降ってしまうと、穂発芽が起こりやすくなってしまいます。
耐倒伏性
出穂後に倒れてしまうと、収量の減少や品質の低下を引き起こします。また、機械による収穫時も倒れてしまうと妨げになります。
こんな感じでコンバインに乗って収穫します。
以前、農家の方に乗せてもらったことがあります✨とても貴重な経験で、心に残っています✨
耐倒伏性に優れた品種の育成は重要となります。
耐病虫性
小麦の病気の種類はいくつかあります。
1.さび病
2.赤さび病
日本小麦作においては大病害のひとつです。抵抗性品種の育成が行われています。
近年、赤かび病菌の一部が産生するかび毒(デオキシニバレノール)の基準値が1.1ppmと設定され、生産者にとっては注意すべき病気とされています。
3.うどんこ病
4.コムギ縞萎縮病
土壌伝染性のウイルス病であり、葉に黄色のストライプ状のモザイクを生じます。
5.雪腐病
積雪中に菌が繁殖し、茎葉が腐敗してしまう病気です。
収量性
育種目標の中では最も重要な特性の一つといえます。さまざまな要因があり、上記の耐性を持つことも増収につながります!
製パンについて
現在主流になっているのが、下記の表の小麦ですね。
小麦の良さを図る指標で、栽培のしやすさを前述しました。
二次加工性の観点から説明します。
専門的にはもっと多くの指標があるそうですが、簡単に最も大切な3つ!!
それは、水分・灰分・たん白です。
水分
製粉工程で、外皮のふすまの混入を最小限にするために加水をします。
その加水量などで小麦粉の水分を調整しています。
製粉会社では、だいたい14.0%~14.5%になるように調整されているそうです。また、水分量は小麦粉の貯蔵の際にも影響します。
パンを作る際の吸水率にも関係するため、重要な要素となっています。
灰分
灰分量が多いほど、ふすまの混入が多いことを表し、小麦粉の純度を表す指標となります。ただし、その年の生育環境などで胚乳部の灰分量は変動します。
そのため、パンを家庭で作る際はさほど気にしなくても良さそうです。
粗たん白
租たん白量は、グルテンの他に水溶性たん白質、酵素を含んでいます。
グルテンの量は、パンを作る上でとても重要ですよね!
グルテンが多いほど、吸水率も上がります。
パン作り初心者にはたん白質が多い方がグルテン骨格が形成しやすいので、作りやすいそうです。
ちなみに私も初心者のため、たん白質が多めの小麦粉で練習しようと思っています。
こんな感じで蛋白と灰分が書いてありますよね!
たん白質 | 灰分 | |
春よ恋 | 12.0±1.0 | 0.45±0.05 |
キタノカオリ | 11.5±1.0 | 0.05±0.05 |
はるゆたか | 11.5±0.5 | 0.43±0.03 |
はるゆたかブレンド(江別製粉) | 11.3±0.5 | 0.46±0.03 |
ゆめちからブレンド(横山製粉) | 11.2±0.7 | 0.41±0.03 |
ゆめちからブレンド(江別製粉) | 12.0 | 0.45 |
ゴールデンヨット(日本製粉) | 13.5±0.5 | 0.46±0.04 |
イーグル(日本製粉) | 12.0±0.5 | 0.38±0.03 |
カメリヤ(日清製粉) | 11.8±0.5 | 0.37±0.03 |
※投稿時点の規格値ですので、変更される可能性があります。ご参考までに。
こういったことを考えて、パン作りをすると楽しいですね!!
さいごに
今回、小麦について書かせていただきました!
もし、間違いや補足などご存知でしたら教えてください。
(参考資料: 小麦品種の特性と栽培上の注意点
「パンシェルジュ検定公式テキスト」
「いちばんくわしいパン事典」
「小麦粉-その原料と加工品-」)